Teppei Ono Pottery Exhibition
– Light In The Shadow Of The Heart –

Teppei Ono

December 03, 2010 – December 16, 2010

For the duration of this exhibition, the gallery will be open on Sundays. However, we will be closed on Mondays.

Takashi Murakami on the significance of exhibiting Teppei Ono’s “modern indigenous pottery”.

現代美術を専門に展示販売するカイカイキキギャラリーで「現代生活陶芸」作家:小野哲平さんの「やきもの」の展覧会を行います。「なぜ、現代生活陶芸作家の展覧会を行うのだ」「なぜ、その第一弾が小野哲平じゃなきゃダメなんだ!?」その辺を回りくどいですが、語ってみます。

まず始めに、私のやってる現代美術の業界をさっくり語ると第二次世界大戦後、戦勝国アメリカのNYが、世界のARTの中心地となりました。戦勝国であったための爆発的な好景気と戦略的な動きによってARTのキャピタルをパリから奪還しました。以来約60年間、ARTと言えばNYに「金・人・モノ」が集まっています。ただし、今現在は中国の北京と上海、そして香港がその対抗馬として台頭して来ています。そんな中、中心地のご機嫌を伺いながらルールを学び方向性を模索するしかないのが、景気の悪い国々の置かれた立場です。

芸術の発展育成の基盤には経済的な要素が一番重要である、とあえて言い切ってみましょう。参考例です。日本芸術の最盛期は桃山時代との見解に異論を差し挟む者はいないと思いますが、つまりは戦国時代の装飾品美術は戦国武将達の見栄と虚栄心の頂点への沸騰により限界までの貨幣が投下され、当時の可能な限りの輸入品や人員を使い切って、その目標達成に邁進した訳ですから。

今現在の日本の芸術状況はどうか?
戦後のいざなぎ景気等を追い風にしたバブル経済が発生した90年代初頭までは今の中華圏の景気の良い業界人と同じように日本の芸術系の人間も、世界中、肩で風切って歩いてました。が、バブル経済の崩壊と共に何もかもなくなりました。
「現代生活陶芸」は、そんな空気の中、産まれたジャンルです。
つまり、芸術の百花繚乱の景気のいい世界観の逆。
景気が悪いが故に勃興する、ミニマリズムの極致としての世界。
贅沢するなんて恥ずかしい。質素に、謙虚に、つましく生きて、人生を全うしよう。焼き物が投機の対象になる等と言った気運に背を向けて、一般大衆に届く誠意の創案創出が大目標となったジャンル。それが「現代生活陶芸」という世界です。

同じような社会背景の中、産まれた戦後の日本での大衆芸術の一番良い例としてマンガ、アニメ、ゲームがあります。マンガ等コストがかからない、紙とペンで創造可能なエンタティメントとして勃興しました。
つまり敗戦国の貧しい文化状況に合わせる形で産まれた芸術。日本のリアルな芸術の現場として、マンガやアニメと同じ風景として実は「現代生活陶芸」が成立した、と言えましょう。その「現代生活陶芸」というジャンルのパイオニアとして小野哲平は存在しています。
村木雄児小野哲平青木亮(故人)の3人が朴訥とした誠意を込めたジャンルとして「現代生活陶芸」を創造&牽引して来ました。そして世の中のトレンド&サブカルチュアー、そしてマーケッティングをコンバインしたショップ「百草」を実業させた安藤雅信、その盟友内田鋼一、らによっても「現代生活陶芸」は価格設定から世の中への浸透性等含めてコンセプチュアルな言語を伴って業界の草分けを行って来ました。

その中でのスターの1人、小野哲平

彼は朴訥としたライフスタイルをメディアに開いて行く事で多くのフォロワーを産んでいます。田舎暮し、日々を慈しむ生活姿勢、そして直球勝負の陶芸作品。彼の作風は民芸的な文脈に今の空気を吹き込んだ、そんな風合いです。奇をてらわず、作風の変化はゆっくりと。しかし作品の制作点数の多さと展覧会の多さは日本国内での人気を裏付けています。特に、
<飯椀>のようなモノへの力の入れ様は、すなわちマーケットでの評価立脚等を無視した、ユーザーへの真っすぐな気持ちを表現したいがため、と言えましょう。

さて、最初の設問への答です。
「なぜ、『現代生活陶芸』作家の展覧会を行うのだ」
それはアニメ、マンガ、ゲームと同じく、戦後日本に咲いたリアルな芸術としての「現代生活陶芸」は真の現代芸術であるからです。
「なぜ、その第一弾が小野哲平じゃなきゃダメなんだ!?」
「現代生活陶芸」界のパイオニアにして現役パワークリエーターの一番脂ののった時期に行う小野哲平の個展こそ、未来の日本の芸術界の裾野を広げる事になるから。です。

そんな文脈のリアリズムからカイカイキキギャラリーにおいて初めての陶芸作家展をおこないます。
皆様、是非、見に来てください。宜しくお願い致します。

村上隆

謝辞:
今展覧会を全面的に支援してくださったのは西麻布の陶芸屋さん『桃居』の広瀬一郎さんでした。作家さんへの橋渡しから、展覧会開催日までの小野さんのテイクケア全般を本当に暖かい尊敬の念を持って行って頂きました。陶芸界での素人であった我々の不手際に怒る事も無く、しずかににこにこと右に左に運転して頂き、心から感謝しております。

また、『うつわ祥見』の祥見知生さんにもお礼を申し上げたい。生活陶芸の世界へ誘ってくださったのは祥見さんの出版された本「うつわ日和」でした。そしてその祥見さんが編纂された小野哲平さんのDVDブック「うつわびと 小野哲平」で、刮目せねばならない切迫感を伝えられた気がします。

そして、webサイト『うつわノート』の松本武明さん。うつわ、陶芸の世界を日々ナビゲートしてくれて、迷える新米陶芸ファンを導いてくださり、この展覧会を行う決断をお手伝いしてくださいました。(松本さんと話し合って、決めたんではなく『うつわノート』を何度も何度も見て、読み返して、「よし」と思ったのでした)

お3方、特に広瀬さん、ですが、本当に「小野哲平陶展『心の闇で、光を放つ』ではお世話になりました。
ありがとうございました。

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